第4回定期演奏会 曲紹介

フェスティヴァル・ベルズ
Festival Bells

オーストリア共和国・オーバーエスタライヒ州で2014年に開催された地域の音楽祭のオープニング曲として、同州出身のトーマス・ドスにより作曲された。

シンコペーション、グリッサンド、アクセントにより装飾され、圧倒的なスピード感で音楽祭は始まる。
中間部で、コールアングレの神秘的な音色によって奏でられるのは同州の州歌「Hoamatland」
度重なる変拍子と木管楽器により繰り返される半音階上昇は、これから始まる音楽祭への民衆の期待が現されている。
爆発的なエネルギーを伴った華やかで魅力あふれるパッセージの先に、強烈な火花が飛び散るようなクライマックスを迎え、幕を閉じる。

伝統的な吹奏楽の魅力が存分に盛り込まれた作品である。

ユーフォニアム協奏曲第3番
(ダイアモンド・コンチェルト)
Diamond Concerto
「Euphonium Concerto No.3」

このコンチェルトは、ドイツのメルシート楽友協会の委嘱で作曲され、2012年4月28日に近郊イーダル=オーバーシュタインの劇場で、作曲者臨席のもと、スティーヴン・ミード独奏、エリック・グランジャン指揮で初演された。

メルシートやイーダル=オーバーシュタインを含むこの地域には古くから宝石研磨工場や金細工の工房があり、鉱山や博物館、風光明媚な自然があることから観光名所として“ドイツ宝石街道”と呼ばれている。スパークはそれにちなんでタイトルを名付けた。

曲は3楽章から成り、各楽章のタイトルは世界的に有名なダイアモンドの名称に由来している。

第1楽章“アース・スター”EARTH STAR

“アース・スター・ダイアモンド(Earth Star Diamond)”は、1967年に南アフリカのオレンジ自由国で発見された111.59カラットのブラウン・ダイアモンド。

この楽章は、オーケストラの静かな響きの中、フリー・ファンタジーとして幕を開ける。主部に入るとテンポが上がり、小さなモチーフ(動機)がソリストと伴奏によって繰り返され発展。そしてカデンツァの後、テンポを取り戻し曲を閉じる。

第2楽章“オーシャン・ドリーム”OCEAN DREAM

“オーシャン・ドリーム・ダイアモンド(Ocean Dream Diamond)”は、中央アフリカ共和国で見つかった5.51カラットのダイアモンド。ファンシー・ディープ・ブルー=グリーンというカラー評価を受けた非常に希少な1種である。

オーケストラによる長めの導入で静かに始まった後、ソロが穏やかに現れる。とても美しく情感あふれる楽章で、自作のブラスバンド作品「バトルクリークのための音楽(Music for Battle Creek)」に使用された楽句が随所に聴かれる。この楽章のソロのフレーズは、作曲者がミードの演奏を思い浮かべながら作られたそうだ。

第3楽章“ブルー・ハート”BLUE HEART

“ブルー・ハート・ダイアモンド(Blue Heart Diamond)”は、原産地不詳の30.82カラットでハート型のダイアモンド。ナポレオン三世の妻、ユジェニ皇后が所有したという噂から“ユジェニ・ブルー”と呼ばれることもある。

最終楽章は、ミードの提案を入れてライトなビバップ・スタイル(ジャズの1形態)で書かれ、アップテンポなジャズ・ワルツの形式で展開される。スパークの他の作品「トロンボーン協奏曲」や「ウィークエンド・イン・ニューヨーク」で聴かれるテーマも姿を変えて現れ、即興に近いムードの中間部分では、ソリストと伴奏がコール・アンド・レスポンスによる即興のような自由な雰囲気で演奏する箇所が設けられている。

本日は、新進気鋭のアーティスト・佐藤采香の独奏とトニカウィンドオーケストラの演奏でお届けする。

アリランと赤とんぼ
Arirang and Akatonbo

この「アリランと赤とんぼ」は有名な2つの旋律を題材に、高昌帥によって編曲、作曲された。大阪府下の朝鮮学校の各吹奏楽部が、大阪府吹奏楽連盟に加盟して20年となる記念として委嘱されたものだ。アカデミックかつ構成感に優れ、国柄の違う2つの旋律が楽曲の中で混ざりあう。明るく親しみやすい楽曲ながら、サウンドや1つ1つの楽句、周到な設計に確かな手腕が感じられる。

「アリラン」は朝鮮を代表する民謡の1つである。この歌の発祥には多くの説があると言われ、研究者の調査により50種類以上もの「アリラン」が存在し、歌詞に至っては2,000を超える種類が伝わっていることが判明しているそうだ。

一方、「赤とんぼ」は三木 露風(1889-1964)が1921年の童謡集「真珠島」で発表した歌詞に、本邦音楽史の巨人・山田 耕筰(1886-1965)が1927年に曲をつけたものである。詞の内容は、露風の幼少時代の風景(兵庫県龍野町)によるものとされる。

曲は、冒頭のオーボエソロとそれに続くサクソフォンセクションの奏でるしみじみと美しい旋律から始まる。この2つの「歌」が持っている力の大きさを、あらためて感じていただきたい。
中間の「赤とんぼ」による展開部は、快活な子供たちのイメージで大変愛らしく、微笑ましい。やがてそれがテンションを高め、輝かしい色彩を放ちつつ金管中低音のエキサイティングな楽句に導かれて、スケールの大きなポリリズムとなってゆく。実に鮮やかな曲中最大の聴き処である。

交響曲第4番「ブックマークス・フロム・ジャパン」
Symphony No. IV Bookmarks from Japan

作曲者のジュリー・アン・ジルーは、知人から贈られた日本の浮世絵がモチーフの「本のしおり」に感動し、その絵から連想される情景をこの作品に描写した。曲は次の6つの楽章で構成されている。

第1楽章 Mount Fuji
“Fuji-San”/富士山

葛飾北斎(1760〜1849)の版画「富嶽三十六景」の「凱風快晴」(通称:赤富士)を描いた曲。富士山は、天候や場所、時間によってさまざまな姿を見せる。その偉大な姿は人々に神秘と愛を与え、早朝の霧や雲に覆われた富士山が次第に陽光に染まっていく姿を、この楽章に映し出している。

第2楽章 Nihonbashi
“Market Bridge”/日本橋

この曲は浮世絵師の歌川広重(1797〜1858)の「東海道五十三次絵」より「日本橋」から印象を受けた作品。1603年に完成した日本橋の通りを行き交う人々の騒がしさや、忙しく商いに励む姿を軽快で賑やかなオーケストレーションによって表現している。

第3楽章 The Great Wave off Kanagawa
”The Life of One Wave”
/神奈川沖浪裏

北斎の「富嶽三十六景」の中に、神奈川沖の大きな波の彼方に富士山が見える絵がある。その漣(さざなみ)に差し込む太陽の輝きを木管楽器が歌い、岩にぶつかる荒々しい波の様子は金管楽器によって生み出される。荒れ狂う波が次第に静まり、最後は穏やかに消え行く光景を旋律に提示している。

第4楽章 Kinryu-zan Sensōji
“Thunder Gate”/金龍山浅草寺

広重によって描かれた浅草寺の象徴とも言える雷門にそびえ立つ「風神」と「雷神」を表現している。風を司る神を木管楽器による重厚な響きで。雷を司る神を金管楽器と打楽器セクションで重々しく、それぞれ異なった日本的な旋律を用いられダイナミックに奏でられる。

第5楽章 Evening Snow at Kambara
“Light is the Touch”/蒲原 夜之雪

こちらも広重の「東海道五十三次絵」の中に登場する「蒲原 夜之雪」がモチーフになっている。ピアノ、ハープ、アルトフルートで始まり徐々に様々な楽器が加わっていき、この3つのパートにより曲は静かに終わる。アルトフルートにより演奏される「歌」は、疲れた旅人を癒すかのような抒情的な旋律である。雪が静かに降り積もっていく寂れた宿屋で思い返すのは今までの旅路であろうか。

第6楽章 Hakone
“Drifting”/箱根

「東海道五十三次絵」より「箱根 湖水図」の険しい山道をイメージして作られた曲である。
カーブとスイッチバックの多い山道を全速力で“ドリフト”するかのような、スリル満点の構成。時代とともに変わりゆく”流れ”を想起させる、終楽章にふさわしい快活で賑やかな楽章となっている。

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